スマイルートのはじまり

スマイルノート創始者 加藤竜也より

「なんで、学校に行かなくちゃいけないの?」
「どうして、勉強しなくちゃいけないの?」

 卒園を控えた娘の質問に、私は、うまく答えることが出来ませんでした。親になって6年。真正面から聞く娘の前で、私は親として未熟さを感じました。
 私は、答えを求めて、実家に行きました。父に同じ質問をすると、「自分が子どもだった頃を思い出してみろ。」と、言われました。でも、思い出せない。断片的に思い出すことは出来るのですが、具体的に子どもの頃の自分は、何を見て、何を感じ、何を考えていたのかと言うことが、どうしても思い出せない。私は、子ども部屋として使っていた、二階の部屋に行きました。私の持ち物は整理され、物置部屋になっていました。子ども部屋としての面影は、ほとんどありませんでした。それでも何かないかなと思い、押し入れを開けると、一冊のノートが出てきました。私が小学一年生の時に使っていた作文ノートです。全部、ひらがな。文字がひっくり返って、なんだか暗号のような文章です。先生が、一字一句ていねいに添削してくれてありました。また、父や母からの感想も書いてありました。そのノートを見ているうちに、思い出が少しずつよみがえってきました。また、自分は、こんなにも愛されて育ててもらったんだと感じ、感謝でいっぱいになりました。そして、ちょっと、胸が苦しくなりました。
 「なんで、学校に行かなくちゃいけないの?」「どうして、勉強しなくちゃいけないの?」娘の質問に、私は私なりの答えを見つけました。それは、答えは、娘の中にあるというものです。実家から家に帰る途中、会社に立ち寄り、娘の写真を表紙にした、娘だけのオリジナルのノートを作りました。世界に一つだけのノートです。私は、グラフィックデザイナーです。ポスターやパンフレットなどのデザインをする仕事です。私に出来ることで、娘だけの特別を作りたかったんです。
「なつ(私は娘をこう呼んでいます)は、今、どんなことに興味があるの? なつは、将来、何になりたいの?」
「学校や勉強は、そのことにどんなふうに役立ちそうかな?」
「お絵かきでも、文字でも、何でもいい。今の自分を表現してほしい。未来の自分を描いてほしい。」
「あなたは特別で、あなたは無二の存在で、あなたの存在そのものが素晴らしい。」
「あなたのことを大切に思っていることを知っていてほしい。」
「家族の愛に、いつまでも包まれていることを知っていてほしい。」
 娘だけのオリジナルのノートを作る中で、私は、娘にそんなことを伝えたかったのかもしれません。初めてのノートは、娘の卒園の記念に贈りました。
 時間を超えて、大人の私と子どもの私をつないでくれた一冊のノート。長い間、このノートを残しておいてくれた親にとても感謝しています。時間に追われて、物や情報が溢れる日常の中で、整理され、埋もれて、捨てられていれば、ただのゴミになっていました。思い出をかたちとして、残しておいてくれたおかげで、私のかけがえのない宝物になりました。
 子どもたち一人ひとり、みんなが主役。子どもたちの「今」を残して、子どもたちの「未来」を応援したい。子どもたちのオリジナルノート「スマイルノート」は、そんな思いから生まれました。
 スマイルノートは、子どもたちの笑顔を表紙にデザインしたノートです。アルバムではありません。ぜひ、使っていただければ嬉しいです。子どもたちに夢を描いてもらってください。先生から贈る言葉、お父さん、お母さん、ご家族の今の気持ちをたくさん書いてあげてください。そしていっぱいになったら、その体験、思い出と一緒に残していただければと思います。20年後、30年後、大人になった子どもたちがこのノートを手にする時、たくさんの愛情に包まれて育ったことをあらためて知るかもしれません。自分の成長の足あとを見て、自分の人生に夢と自信と誇りを膨らませるかもしれません。

(2017年7月13日、加藤竜也執筆)

地域に広がる活動

 スマイルノートは、2002年(平成14年)にグラフィックデザインの仕事をしていた加藤竜也さんが、我が子の成長の節目に、「何かできるできることはないか」と考え作ったのがはじまりの、世界に1つだけのオリジナルノート(自由帳)です。
 このノートには、「お絵かきでも、文字でも何でもいいから今の自分を表現してほしい。成長の足跡を残してほしい。家族の愛にいつまでも包まれていることを知ってほしい。一人ひとりがひとつの星のように、みんな違って、みんな素晴らしくそれぞれ輝き、調和のとれた豊かな世の中になってほしい」そんな思いが込められています。
 はじまりは、たった一冊のノートでしたが、近所の友達に広がり、地域の幼稚園・保育園に広がっています。
 スマイルノートを卒園・進級の節目に無料で配布するというこの活動は、お金も労力も必要です。活動当初は、加藤竜也さん一人でポケットマネーを使い、活動していました。
 今は、そんな加藤さんの意思を受け継ぎ、スマイルノートの趣旨に共感いただいた、企業・個人からの賛同金や、園児の撮影などに協力してくださる方など、多くの地域の人々に支えられ活動しています。いつの間にか、地域の大人たちが、地域の子どもたちを共に応援する大きな活動にまで成長しています。
 この活動が長年続けられてきていることは、園長先生をはじめ幼稚園・保育園の先生方、保護者および、ご賛同いただく地域のみなさんのご理解と、ご協力があってのことです。本当にありがとうございます。
 これからも、この活動をご理解いただき、ご協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。

スマイルノートの目的

地域未来の創造。

スマイルノートの仕様

サイズB5サイズ
表紙モノクロ
白無地(自由帳)
ページ数全32ページ(表紙まわり4ページ+自由帳部分28ページ)